Vol.18
頭だけで考えず、体を動かして前に進む
上田啓二郎さん (69歳) 箭田
避難先:真備総仮設
2019年4月21日(日)
小田川が逆流してくるのを見ました
箭田地区まちづくり協議会のスクラム班として活動していたこともあり、雨が降り続くので気になって矢掛橋や酒津の水位などを注意してみていました。23時半に総社の爆発事故があり、自宅周辺は大丈夫だと思って、車でパトロールに向かいました。小田川と高馬川が合流する地点に行くと、ずいぶんと水が増えていて、近所の住民とも「大丈夫かな」と言葉を交わしました。15分後に再度、合流点を見に行くと、小田川が逆流し始めました。逆流というのは、水面の上を水が波打ちながら走ってくる感じです。あっという間に高馬川の合流点に達して、堤防を崩し始めました。これはやばいと思い、自宅に戻り、猫を連れてまきび公園の先の公園に向かいました。しかし、車がいっぱいだったのでクリーンセンターへ避難しました。一夜明けて空が白みはじめた頃に、町をみたら湖になっていました。自宅の様子を確認しようと箭田神社の境内へ行く道から我が家を確認すると、2階の屋根が辛うじて出ていました。
頭で考えていてはダメ。体を動かさないと。
日頃、スクラム班として地域をパトロールしていたので、災害ボランティアセンターから手伝ってほしいと依頼がありました。自宅の片づけは、友人に「もう全部捨ててええから」と頼んで、外部から来てくれたボランティアさんの送迎を10月の初め頃まで行いました。途中から行政の担当者が杓子定規な運営をしはじめ、頭にきて辞めました。また、私が避難していたクリーンセンターには百人以上の人が避難しているのに、救援物資の配布が遅れるなど問題が多々ありました。クリーンセンターは、最後まで避難所に指定されなかったのですが、当施設は倉敷市以外の市町村との連携施設だからだそうです。現場の状況ではなく、ルールを重視して行動する行政対応には疑問を感じました。
送迎のボランティアを辞めてからは、吉備真備駅の側にある花壇の手入れを毎日行っています。災害前は数人で担当していましたが、今は人がいないから一人でやっています。季節の花を植えて、夜はイルミネーションをともして、少しでも真備に賑わいが生まれたらと思い活動しています。私は頑固で気に入らないことはしないから。
頭だけで考えていてはだめ、体を動かしながら前に進んでいかないと。
みんなが家に帰れて、前と同じ生活ができれば一番いい。
私は元々九州出身で、仕事で倉敷に来て、結婚を機に真備に家を建てて335年になります。5年前に妻を亡くし、今回の水害のこともあり九州に戻ることも考えましたが、やはり真備に家を再建しようと思っています。のどかというか、平和で静かなええとこじゃ、真備町は。だから、これ以上発展する必要ないと思うし、前と同じような生活ができれば一番いいと思います。
真備には年寄りが多いから、真備に戻れるような施策が必要だし、安心して暮らせるよう、河川の整備を早急に進めてほしい。また、いざとなったら避難行動ができるよう、防災にも、真剣に取り組まないといけない。地域でまとまって、行動していくことが大切だと思います。
(聞き手:矢吹、石塚)