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Vol.14

“あきらめること”も必要。そして前を向く。

若林 久仁子さん (67歳) 有井

避難先:玉島

2019年3月23日(土)

ハザードマップは確認していたのに備えていませんでした

  6日の夜、帰宅途中の息子が、末政川を越える国道で越流した川の水をかぶりました。車の鍵を警察に預けて徒歩で自宅に戻ってきました。そして総社の爆発事故がおこり、地震かと思いました。まさかこの雨で、家が浸水するとは思っていませんでした。ただ停電するかもしれないと思い、孫達の明日の食事を心配して、おにぎりを作りました。後に片付けを手伝いに来てくれた友人が「荷物を上にあげる時間があっただろうに」と言われましたが、その時は水に浸かるとはまったく思っていなかったのです。孫と2階で寝ていたら、外の様子を確認していた息子が「出るぞ!」と突然声をあげ、一晩泊まる用意と貴重品だけを持って、家の裏から歩いて地区の公民館をめざしました。途中、近所の高齢者の家に「私たちは避難します、気をつけて」と声をかけながら避難しました。

 実は明治生まれの夫の祖母が、少女時代に浸水を経験し、柱にしがみついて泣いていたという話を聴いていました。しかし、正確に言い伝えられていなかった。また、私はハザードマップのことを知っていたし、マップに我が家の位置をマークしていましたが、知識はあっても、あの雨で水害が起こるとは思わなかったのです。

 

失ったものはたくさんあるでも前を向くしかない

 私たちは夫の祖父が建てた家に住んでいました。大工さんから、まだ百年は住めると言われていた昔ながらの土壁の大きな家です。浸水は一階まででしたが、リフォームをすると、かなり高額となることがわかり、夫婦だけが住むので、解体し新築することを選択しました。先祖が建てた大切な家を守ることができませんでした。そして、日常生活はすべて一階で行っていたので、日用品から思い出の物まで全てを失いました。高台から我が家が水に浸かっている様子を見たとき、思考が停止しました。でもあきらめることも必要です。あきらめなければ、前に進めないこともあると学びました。

 

備えておくことご近所の大切さを伝えたい

 今回の経験を話してほしいと講演依頼がありました。身近な友人から全国の方まで、本当に多くの支援をいただきました。その気持ちに応えたくて、依頼されたことは引き受けています。みなさんに伝えたいのはまずは「備え」です。自分の命は自分で守る、そして家族を守るための備えとして、避難する場所を決めておく、自然災害の保険に入っておくなど精神的な備えと経済的な備えの両面が必要です。災害はいつ、どこで起きてもおかしくないと意識して生きていかないといけないと伝えたい。そして、向こう三軒両隣りと言うように、近所のコミュニティの大切さです。私たちの地域は被災された方とそうでない方がいます。被災されなかった方はとても遠慮されています。「これくらいのことしかできないから」と採れたての野菜を持ってきてくださり、「自宅に戻ります。」と伝えると、涙を流して喜んでくださる方も。近所の方が声をかけてくださり、支えてくださるからこそ、ここへ帰ってきたいと思うのです。被災者、非被災者の区別なく、みんなで一緒に真備を復興させていこうという動きができるといいなと思います。   

  

(聞き手:矢吹、石塚)