“小さな声”の仲間とつくるまちづくりへの期待 石塚 裕子

真備ではじまった“小さな声”の仲間とのまちづくりは、何が大切で、何が新しいのか、


真備ではじまった“小さな声”の仲間とのまちづくりは、何が大切で、何が新しいのか、そして今後どのように進めていくべきなのか、第三者の立場から考えてみたいと思います。


■なぜ失敗をくりかえすのでしょうか

災害が起こるたびに障害者、高齢者など社会的弱者に被害が集中します。真備でも同様でした。なぜ、同じ失敗がくり返されるのでしょうか?

この問いの解を見つけるために、私はこの25年間に発せられた障害当事者の声を集めました。その結果、障害者自立生活運動のスローガンである“Nothing about us without us(私たち抜きで私達のことを決めないで)”と発し続けていることがわかりました。

これまでの災害対応は、“小さな声”の人たちが参加できる機会は限られ、管理者や支援者が中心となって考えられてきたと言えるでしょう。また、復興の場面においても、急ぐがあまり“小さな声”の人はおいてけぼりになってきたのではないでしょう。“小さな声”の人たちと一緒に考えてこなかったことが、同じ失敗をくり返す要因になっていると私は考えています。


■真備ではじまった“小さな声”の仲間によるまちづくり

  この冊子に綴られている活動の中で、特に“小さな声”の仲間が中心になって取り組んだことがあります。“まちコン(主催する)”、“数珠つなぎプロジェクト(声を集める)”、“七夕会(対話する)”です。いずれもマイノリティといわれる障害当事者がマジョリティである地域住民、行政に、「一緒にやりましょう」と働きかける第一歩となりました。

活動を共にしてわかってきたことは、“小さな声”の仲間は、自分の声を聴いてほしいわけではなく、「お互いの声」を聴きたいと思っているということです。「お互いの声」を聴きあうことで、支援者-非支援者、被災者-非被災者、障害者―非障害者といった固定した関係を越えて、お互いに尊重しあう関係が生まれてきました。これまで「当事者の声」を聴くことは大切であると認識されていましたが、関係性を超えて「お互いの声」を聴きあう場面は少なかったのではないでしょうか。

私たちは、災厄に立ち向かう時、悲しみや辛さを吐露し、頑張りたいけど頑張れないもどかしさ、その当たり前の感情を分かち合うことから、抗う力となる連帯が生まれます。真備では、これらの活動を通じて“小さな声”の仲間と地域の人々が、お互いの声を聴きあう機会が増えました。そして既存の関係性を越えた新たな連帯が生まれ“小さな声”の仲間と共につくるまちづくりが始動したのです。


■“小さな声”の仲間たちが本当に主役になれるのか。これからが本番。

真備では災害が1年を過ぎたあたりから、河川整備や災害公営住宅の建設などの復興事業が軌道に乗りはじめ、まちづくりのスピードが増してきました。そして、再びやってくる雨の季節に備えて、防災への取り組みも加速していこうとしています。ただ、そこに“小さな声”の仲間たちの姿はあるでしょうか。周りで共にいる者が熱心になることは必要ですが、その主体となるべき“小さな声”の人たちのペースにあわせて、あせらず、じっくり、しかし着実に進めていくことが大切だと思います。“小さな声”の仲間が本当に主役になれるのか、だれもが助かる社会を創っていけるのか、これからが本番です。

現在、新型コロナウィルスが蔓延し、すべての人が災禍の中にいます。日々の活動が制限される中で、立ち止まり、これまでの生活スタイルや価値観を見直すことが求められているように感じます。人と人のふれあいによる支え合いが難しいからこそ、離れていてもつながりを感じ、他者に共感し、信頼できる力を試されているように思います。

この記録誌のひとつの役割である「忘れない」ことが、くり返しおこる災厄への抵抗となり得るでしょう。そして、コロナ災禍においても社会から疎外され、障壁を設けられ、生きづらさを抱えながらも懸命に生きてきた“小さな声”の仲間たちから、その経験に学ぶことがたくさんあるように思います。真備から始まった“小さな声”の仲間とつくるまちづくりに期待しています。


石塚裕子(プロフィール)

大阪大学大学院人間科学研究科附属未来共創センター・特任講師

博士(工学)。技術士(都市および地方計画)。日本福祉のまちづくり学会副会長。


兵庫県神戸市出身。建設コンサルタント会社勤務を経て現職に至るが、主に障害当事者との協働による交通、観光、防災に関するまちづくり研究、実践を行っている。現在かかわっているフィールドは岩手県野田村、福島県いわき市などの被災地のほか、兵庫県上郡町などがある。倉敷市では美観地区のバリアフリーのまちづくりに長年かかわってきた経験を持つ。



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